層状物質として鉄系超伝導体、層状窒化物超伝導体のNMR測定を行った。新鉄系物質K_xFe_<1-y>Se_2に関してはSe-NMRから磁気揺らぎが類似物質のFeSeに比べて弱いこと、超伝導ギャップの対称性が等方的なマルチギャップか、もしくは異方的であることを指摘した。また、ペロブスカイト層を含む鉄系超伝導体Ca_4(MgTi)_3Fe_2As_2O_8では40K以上の転移温度が実現しているにもかかわらず、磁気揺らぎは顕著に発達していないことが分かった。これらの結果は単に強い臨界的な磁気揺らぎが鉄系の超伝導に直接寄与している訳ではないことを示唆している。 また、層状窒化物Li_xZrNClのNMR測定ではフォノンと媒介としたBCS超伝導体に見られるコヒーレンスピークが現れないことを明らかにした。つまり、フォノン以外の超伝藤機構の可能性がある。Liのドープ量を下げていくと超伝導転移温度が上昇するが、その際に超伝導転移温度以上からギャップ的な振舞いが現れているとを明らかにした。このことから、フェルミ面の形状の変化が超伝導転移温度の上昇に関与していることが示唆され、ネスティングの重要性を指摘する理論と矛盾しない結果を得た。 籠状クラスレート物質のBa_8Ga_<16>Sn_<30>では内包Baイオンの局所振動の観測に成功し、0.4Kにおいてもその振動は生き残っていることを明らかにした。また、クラスレート超伝導体Ba_8Si_<46>におけるBa-NMRではBaイオンの局所振動に起因するような異常は観測されなかった。加えて、Si-NMRからコヒーレンスピークの観測に成功し、超伝導機構は従来のフォノン機構で説明できることを明らかにした。
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