◆充填スクッテルダイト:報告されている多結晶の試料に比べ電気抵抗率が1桁以上小さい、YbFe_4P_<12>として初の純良単結晶を育成し、物性評価を行った。その結果、(1)抵抗は30Kに極小を示したのち-logTで増大し続け、(2)帯磁率は多結晶に比較してPauli常磁性的に大きく抑制されるが、~50K以下で急激な増加を示す。更に、(3)電子比熱係数は~2Kで100mJ/molK^2と大きな値を示し、より低温で非フェルミ液体的振舞いを示す興味深い物質であることを明らかにした。また、高圧下フラックス法により、SmRu_4As_<12>、SmOs_4As_<12>、YbOs_4Sb_<12>の単結晶育成に成功し、初めての物性測定を進めた。そのうち、SmRu_4As_<12>に於いて、非磁性の2段転移を発見し、SmOs_4As_<12>では、約5Kにおける強磁性転移に加え約9Kに明白な異常を見出した。YbOs_4Sb_<12>の帯磁率は低温を除いて、2価のYbで期待される極めて小さい値を示すが、低温で異常な増大を見出し、起源の解明を進めている。 ◆充填スクッテルダイト以外の4f電子系配列ナノ空間物質:RT_2Al_<20>(R:希土類、T:遷移金属)、RAu_3Al_7の単結晶育成を進めた。RT_2Al_<20>のうち、特に、SmT_2Al_<20>系(T=Ti、V)に重点を置いて結晶合成を行い、残留抵抗比が大きな純良単結晶の育成に成功した。T=Tiを例に、得られた特徴を説明する。帯磁率は、室温より温度低下と共に減少し、~50Kで極小示した後~6Kに反強磁性的な転移を示す。電気抵抗は~100Kに極小を示したのち、顕著な-logT依存を示し近藤効果を示唆している。ホール係数は転移に伴い大きく増加し2Kでは転移温度での値の約5倍となる。これは反強磁性転移に伴う超格子構造によるキャリヤー数の減少を反映すると考えられるが、極めて小さな磁場依存は、新奇な機構の寄与を期待される。
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