(1)常温常圧で安定なガスハイドレート結晶の構築:メタンハイドレート(MH)は、277Kの温度で約5MPa(水深500m以下)の低温高圧領域でしか安定化しない氷の多形である。もし、このMHを室温で安定に取り出そうとするなら、約40MPa以上の高圧下で取り扱わなければならない。私たちは、ガスハイドレート(GH)を安定化するために必要な高圧をナノ空孔内で発生する擬圧力で補ってやり、常温常圧で安定なGHを合成することを目的にあげた。GHのI型は、水分子クラスターの5員環が12個、水素結合して作られた12面体(S1-512空孔系:7.88Å)と、5員環12個と上下の頂点部分が6員環からなる14面体(M-51262空孔系:8.6Å)が、それぞれ2個と6個結合して作られた単位格子からなる。このGH構造を再現することによって、GHが氷化する温度で臨界ガスのH2やCH4を固体状態で大量に吸蔵することができる。これはCH4の液化に-80℃以下で40MPaに圧縮する必要があることを考えると重要な保存方法になりえる。私たちは14面体構造が連なった水分子クラスターを[RuIII(H2bim)3]3+錯体とトリメジン酸を用いて、室温でも安定なGH-I型の部分構造として構築することに成功しTHFハイドレートとして得ることに成功した。今後、気体の導入を行って人工ガスハイレートの合成を確立していきたいと考えている。
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