研究領域 | フラストレーションが創る新しい物性 |
研究課題/領域番号 |
22014001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
富安 啓輔 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (20350481)
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研究分担者 |
池田 伸一 独立行政法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス研究部門, 主任研究員 (10344201)
渡辺 忠孝 日本大学, 理工学部, 講師 (70409051)
原 茂生 中央大学, 理工学部, 助教 (60520012)
高阪 勇輔 青山学院大学, 理工学部, 研究支援者 (60406832)
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キーワード | フラストレーション / 中性子散乱 / 超音波測定 / スピン分子 / 量子スピン液体 |
研究概要 |
スピン分子の形成は代表的なフラストレーション効果の一つである。本応募課題は、スピン分子現象の普遍性やルーツに迫ることを目的とし、フラストレート系の根幹になるスピン揺らぎ状態を検証するのに直接的な手法である定常・パルス中性子非弾性散乱を駆使して、スピネル酸化物フラストレート系のスピン分子励起を研究するものである。また、本応募課題は、フラストレーションが引き起こす他の様々なスピン揺らぎ現象に対してもそのモデルケースとして期待されるものである。 初年度の平成22年度は、計画通り、MgCr_2O_4とGeCo_2O_4の大型単結晶集合体を用いた中性子非弾性散乱研究を行なった。特に、GeCo_2O_4についてはスピン軌道相互作用を取り込んだ解析に成功し、スピン軌道分子一重項(新種の量子スピン液体)という物理描像を提唱したところである。また、我々は単結晶超音波測定も行ない、一重項描像が定量的なレベルで超音波データを説明できることを突き止めた。この中性子と超音波の融合は、これまで中性子非弾性散乱でのみ有効なアプローチが可能だったスピン分子励起現象に対し、その他の実験ツールとの多角的な研究が可能になりつつあることを暗示するものである。現在、MgCr_2O_4についても、同様の解析と超音波測定を試みている最中である。 次に、我々はZnFe_2O_4の粉末中性子非弾性散乱によるスピン励起のS(Q,E)全体像も測定した。その結果、約10meVに非分散的なスピン励起モードを発見し、加えて驚くべきことに、この励起が自己エネルギーの約3倍である室温においても生き残っていることを発見した。この結果は、スピン分子の異常な安定性、あるいは、本物質中におけるFe^<3+>イオンの持つ特異性を示唆するものであり、詳細を解析中である。
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