公募研究
量子スピンカゴメ格子のモデル物質ボルボサイトCu_3V_2O_7(OH)_2・2H_2Oにおいて、磁場中の詳細な核磁気共鳴(NMR)測定により、遅いゆらぎを伴った異常なスピン状態と、ほとんど通常の反強磁性状態にあると考えられるスピン状態の共存を見出した。これら2つのスピン状態は、1:1の存在比を満たしており、ある種の超構造を形成していると考えられる。この共存状態は、ボルボサイトが極低温で示す異常なゆらぎを伴った磁気状態から、磁場印可によりゆらぎが抑えられることにより現れてきた新奇な磁気状態であると考えられる。Heterogeneous spin stateと名付けた。また、より理想的なカゴメ格子のモデル物質であるベシニエイトBaCu_3V2O_8(OH)_2の試料改良を行った。結果、以前のものに比べて粉末X線散乱のピークの半値幅が1/4程度までシャープな、非常に質の高い試料を得ることができた。この試料を磁化測定したところ、約9Kに明確なピークが観測された。このことから、ベシニエイトは約9Kにおいて何かしらの磁気相転移を示すことが明らかになった。このピークは以前の試料には見られず、改良された試料により初めて明らかにされた特徴である。23年度はNMR測定により、この磁気転移の原因を解明する。また、ボルボサイトの単結晶試料が広井グループにより合成された。これを受け、NMRの詳細測定を行うための準備を進めた。カゴメ格子と並ぶ代表的なフラストレート系であるパイロクロア格子を持つHg_2Ru_2O_7のNMR測定を行い、この物質が、金属絶縁体転移とともに反強磁性秩序することを明らかにした。詳細な解析から、この物質を理解するには局在スピン系とみるより遍歴電子系からのアプローチが必要であることを明らかにした。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 80 ページ: 034705-1-034705-9