異方的2次元フラストレート磁性体の有限温度の性質に対する1次元系からのアプローチの有効性を明らかにするために、異方的2次元のフラストレートしたハイゼンベルグ反強磁性体の有限温度の性質を、1次元ハイゼンベルグモデルの精密な数値計算結果と鎖間弱結合理論とを組み合わせた解析によって定量的に調べた。その結果、異方的三角格子反強磁性体であるCs_2CuCl_4やCs_2CuBr_4の帯磁率を1次元系からのアプローチによって定量的に説明することができた。次に、電荷の自由度が重要であると考えられているスピン液体について研究を行うために、1次元電子系の動的性質を厳密解と高精度シミュレーション手法を用いて精密に調べた。その結果、擬ギャップ、ホールポケット、スペクトル強度の遷移、上部ハバードバンドの性質など、1次元系のモット転移近傍の動的性質を1次元系の準粒子(スピノン、ホロン、反ホロン、ダブロン)によって統一的に説明することに成功した。特に、モット転移が電荷の自由度の凍結によって生じるスペクトル強度の減衰と、モット絶縁体におけるスピン励起に起因するドーピングによって誘起されるギャップレスモードによって特徴づけられることを明らかにした。1次元系で得られた性質は、高温超伝導体で観測されている異常な振る舞いや、2次元ハバードモデルの性質とも類似点があり、モット転移一般に成り立つ特徴を含むものと考えられる。この研究は、2010年10月に出版されたPhysical Review Letters誌に掲載された。
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