研究領域 | フラストレーションが創る新しい物性 |
研究課題/領域番号 |
22014015
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
河野 昌仙 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (40370308)
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キーワード | モット転移 / 高温超伝導体 / 擬ギャップ / 電荷自由度の凍結 / スピン波励起 / クラスター摂動理論 / 厳密解 / ストリング解 |
研究概要 |
フラストレートしたモット絶縁体で観測されているスピン液体的な振る舞いを、1次元系で得られた厳密な結果と高精度シミュレーション手法とを組み合わせた方法によって定量的に説明し、1次元系の描像に基づく理論的解釈を与えることを目的として研究を行った。平成23年度は、2次元電子系のモット絶縁体近傍における電荷揺らぎに注目して研究を行った。具体的には、2次元ハバードモデルの1粒子励起についてクラスター摂動理論を用いて数値的に調べ、平成22年度に厳密解を用いて得られた1次元系の結果と比較した。その結果、1次元系と同様に、モット転移に向けてスピンの自由度は連続的にモット絶縁体のスピン波励起へと変化し、電荷の自由度は徐々に凍結することが明らかになった。この特徴は、モット絶縁体のスピンと電荷の分離を反映したモット転移の一般的性質であると考えられる。また、2次元ハバードモデルのモット転移近傍の性質によって、高温超伝導体で観測されていた様々な異常な振る舞い(擬ギャップ、フェルミアーク、スピンノン的励起、ホロン的励起、キンク、ウォーターフォール、ギャップ内励起、ホールポケットなど)を統一的に説明することに成功した。さらに、斥力によってエネルギーギャップが生じる起源は、1次元系のストリング解に遡ることができることを示し、モット絶縁体のギャップは電子のペアと見なせる準粒子(ダブロン)によって説明できることを明らかにした。この研究成果は、2012年2月のPhysical Review Letters誌に掲載された。また、プレス発表も行い、日経産業新聞、日刊工業新聞、科学新聞の記事として掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異方的2次元フラストレート磁性体Cs_2CuCl_4やCs_2CuBr_4の有限温度の帯磁率を1次元系からのアプローチで説明することができた。また、電荷揺らぎを取り入れた研究として、1次元ハバードモデルと2次元ハバードモデルのモット転移の研究を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後、フラストレートした系のモット転移に関する研究を進める予定である。
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