公募研究
ナノスケールの細孔を有するナノポーラス金属は、新しい不均一系触媒として最近注目されている。そこで本課題ではこの触媒を様々な反応系に展開し、有機合成化学におけるその有用性を明らかにすると共に、その金属材料に含まれる微量の異種金属が、触媒活性にどのような影響を与えているかについて明らかにする。まず報告者はPd-Ni-P金属ガラスを硫酸中で電気分解処理を行うことにより、ニッケルとホスフィンを選択的に溶出して、平均細孔サイズ30nmのナノポーラスパラジウムを調整した。次にこの物質を、鈴木カップリング反応に適用した。鈴木カップリング反応は、炭素骨格構築のための重要な炭素-炭素結合形成反応であり、工業化学の分野において極めて広い利用価値を有している。均一系パラジウム触媒は本反応の触媒として有用であるが、触媒の再利用が困難であるため、回収の容易な不均一系触媒の開発が現在盛んに行われている。しかしこれまでに開発された触媒は、触媒活性や耐久性、耐リーチング性において多くの問題が存在する。これに対しナノポーラスパラジウムは、高い触媒活性、簡便な操作性、高い耐リーチング性を有していることを見出した。触媒は反応終了後にピンセットで取り出すことができるため、ろ過や遠心分離などの煩雑な操作を必要としない。また回収した触媒は再利用が可能であり、少なくとも5回の繰り返し実験では触媒活性が維持されるなど、ナノポーラスパラジウムが鈴木カップリング反応の優れた固体触媒として機能することを明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (12件)
J.Invest.Dermatology
巻: 131 ページ: 108-117
Angew.Chem.Int.Ed.
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