研究概要 |
SrTiO_3人工超格子中に閉じ込められた極薄二次元電子層はバルクの数倍の巨大熱電能を示す[H.Ohta et al., Nature Mater, 6,129(2007)]ことから、高効率熱電材料の設計指針を与えるモデルとして有望である。本研究では、srTiO_3単結晶電界効果トランジスタへのゲート電圧印加によりゲート絶縁体/SrTiO_3単結晶界面に高密度で蓄積される二次元電子層を可視化し、極薄二次元電子層の巨大熱電能の起源を明らかにすることを目的とした。具体的には高分解能電子顕微鏡観察ならびにデバイスシミュレーションにより、ゲート絶縁体/SrTiO_3界面に蓄積された電界誘起二次元電子層を可視化し、熱電能との関係を調査した。本特定領域内AO1ナノ計測(ア)班との連携研究により,(1)ゲート絶縁体薄膜が水で満たされた直径約10nmのナノボアを30体積パーセント含み[H.Ohta et al., Nature Communications 1:118(2010).]、(2)ゲート電圧印加によってSrTiO_3表面に押し付けられたナノボア中のH_3O^+イオンが、(3)SrTiO_3中の残留キャリア電子を強力に引き寄せることで、バルクの5倍の巨大熱電能を示す極薄二次元電子層(究極の機能元素)が生成することが明らかになった[H.Ohta et al., Adv. Mater. 24,740-744(2012).]。以上の研究から、機能元素「極薄二次元電子層」を熱電材料の表面に誘起し、巨大熱電能という有用な機能を発現させるための「水電気分解による二次元電子層の電界誘起の学理」を構築することに成功した。また、本研究で得られた水電気分解による二次元電子層の作製手法を応用し、一次元AFMリソグラフィーを行うことで更に大きな熱電能を示す材料が創製できると考えられる。
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