研究概要 |
カーボンナノチューブ(CNT)は、その物性が構造に依存していることがよく知られており、その精緻な応用には物性の制御された、即ち、構造の制御されたカーボンナノチューブが必要となる。そのような背景から、報告者らは構造の制御されたCNTを得ることを目的に、分子認識を利用した方法論をデザインし、現在、検討を進めている。具体的には、CNTとピンセット型ジポルフィリン化合物からなる超分子を鍵とする、CNTの可溶化、ならびに、それに伴うCNTの構造選別である。 当研究グループでは、これまでにm-phenylene, pyridilene, carbazolyleneをスペーサーとするピンセット型ジポルフィリンを設計、合成し、単層カーボンナノチューブ(SWNTs)の抽出を行い、上記ピンセット型分子がSWNTsの右巻き、左巻きを識別し、光学活性SWNTsを与えることを明らかにしてきた。また、このピンセット型分子は、巻き方のみならず、直径をも識別することも見出した。 平成22年度は、上記のジポルフィリン化合物より合成が簡便なジピレン化合物を設計、合成し、SWNTの選択的な抽出を行ったところ、ジピレン化合物がSWNTsの抽出能を有すること、また、SWNTsの直径を識別できることが明らかとなった。(N.Komatsu et al., Chem. Sci., 2011)。本検討においては、0.84nm-0.97nmの直径を有するSWNTsが優先的に抽出された。また、これまで用いてきたCoMocATのSWNTに代え、HiPCO-SWNTを用いたところ、これもうまく抽出され、0.97nm以下の直径を有するSWNTsが優先的に抽出された。なお、本論文は、Chem. Sci.誌5月号のinside cover pictureに採択され、報告者らの成果を広くアピールすることができた。 今後は、得られた成果に基づき、さらなるスペーサーの検討などを行い、直径の選別能の向上を図る。
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