研究概要 |
(1)ナノチューブの欠陥列とグラフェン端は同じ格子構造を持つ.また電子構造も共通でありK谷,K'谷状熊がフェルミエネルギーで縮退する.本年度は1,2層グラフェン境界を透過する電流を有効質量方程式の方法で調べ,次の4つの成果を得た.[A]電流の方向の関数として透過確率は非対称となる.K谷状態とK'谷状態の電気伝導チャンネルについて,その非対称性は逆である.スピントロニクスにおけるスピン分極に似た谷分極を示した.この分極はゲート電圧などにより制御可能であり,バレー・フィルタなど応用の可能性が示唆される.[B]0エネルギーで入射電子は境界で完全反射し,電気伝導度は電荷密度に比例し増加する.実際の大面積単層グラフェンの上に小さなグラフェンが付着したような構造は一般的なので,そこでの電気抵抗の素課程として基礎的な知見を与えた.[C]境界に垂直な強磁場をかけたときの電子状態を調べた.グラフェンのランダウレベルは独特であり層数により量子化条件が異なる.そのランダウレベルが境界でどの様に接続するか解明し,境界付近に表面ランダウレベルを示した.これは境界の原子構造にあまり依らない.[D]端状態の観測にはSTMが有効である.磁場の有無それぞれの場合について,電子波干渉効果を示し,磁場がない場合について実験と比較した. (2)カーボン・ナノチューブの電気伝導度に表れる量子干渉効果に及ぼす電極接合の効果を理想的電極のモデルを用いて調べた.透過率の良い電極は位相緩和機構として働き,量子干渉効果の観測を妨げる.国内外の実験グループと議論し,結果を比較した.
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