研究概要 |
本研究の目的は、核融合炉における作業環境の汚染のモニタリング等のために、イメージングプレート,IP法により材料中におけるトリチウムの非破壊濃度分布評価法を開発することである。トリチウムから放出されたβ線と材料との相互作用によって生じる制動放射線をIP法により測定することで脱出深さより深部にある材料中のトリチウムを非破壊で評価することが可能となる。しかし、深部に分布したトリチウムでは深度に伴い制動放射線のスペクトルが大きく変化する。また、IPの本体である輝尽性蛍光体,BaFBr(1):Eu2+,はトリチウムレンジでエネルギーに伴ってPSL(photostimulated luminescence)レスポンスが急激に増加するため、IP法による定量評価には深度分布情報が必要とされる。これまでに、トリチウム線源が単体として存在するモデルにおいて、トリチウムのエネルギーレンジにKもしくはL殻電子吸収端をもつ各種アブソーバーの厚みとIP(BAS-MS)のPSL(輝尽性発光,Photo-Stimulated Luminescence)減衰曲線の変化の関連を求めることで、材料深さ方向の分布情報を取得できることを明らかにし、IP-アブソーバー法として確立してきた。23年度には、既知量のトリチウムを吸収させたニッケル,Ni試料に本法の適用を行なった。24年度には、既知量のトリチウムを吸収させたバナジウム,V試料にも本法を適用し、Ni試料の結果と比較した。Cu,Al,Auフォイルをアブソーバーとして用いたPSL減衰曲線を比較したところ、拡散が終了しておらず深度分布が均一でないNi試料ではCu及びAlアブソーバーとAuアブソーバーで減衰のパターンがまったく異なるが、日数が経過したNi及びV試料では全てのアブソーバーについて減衰のパターンは同じになることが示された。本法により固体内トリチウムの拡散状況を非破壊的に観察できた。
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