ITERでは、エロージョンおよびトリチウムリテンションの高さからカーボン壁が敬遠されているが、ダイバータでの僅かな使用でも他の材料の炉壁表面にカーボンダストが堆積して高いトリチウムリテンションを起こす可能性がある。一方で、使用環境が高温であれば、これらの欠点が回避されるので、炭素壁の使用も十分に可能と考えられる。このため、DEMOでの使用も含めて炭素材料そのもの、中性子照射により欠陥が導入された炭素材料、ダスト形状の炭素材料等について水素吸収特性とその放出特性を調べる必要がある。この研究では、予め飽和量まで気相中から水素を吸収させた試料からの水素の昇温脱離(TDS)を、これまで調べられていなかった1100℃を上回る1450℃までの温度範囲で測定した。等方性炭素材に対して行った6K/minでの測定結果によると、1000~1200℃付近に最大のピーク、1350℃付近にその1/3程度の大きさを持ったピークが認められた。はじめのピークは、その温度に黒鉛フィラー粒径依存性があり、フィラー粒内の拡散律速と考えられる。昇温速度を変化させ、ピーク移動から放出の活性化エネルギーを求めると、それぞれ3.48eV、6.93eVとこれまで評価してきた2.6eV、4.4eVよりも大きく、極めて高い値となった。また、ダスト材は、(1)水素雰囲気中での摩砕、(2)メカニカルアロイング、(3)グラファイトウィスカーに対して水素吸収実験を行った。摩砕資料では、熱分解黒鉛で最大1at%の水素吸蔵を示したのに対し、等方性黒鉛ではほとんど水素保持量の増加は観察されなかった。メカニカルアロイングでも同等の水素吸蔵量となり、黒鉛化度の極めて高いグラファイトウィスカーは、等方性黒鉛の1/100程度の低いリテンション量を示した。
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