研究概要 |
本研究では,波長可変でパルス幅が約2ピコ秒の近赤外光パルスをラマン励起光源としたピコ秒時間分解ラマン分光システムを拡張・改良し,これを機能性分子・高分子・生体分子の電子励起状態へ応用する.平成22年度に行った主な研究課題は,次の4項目である. L波長可変な近赤外光を励起光源とするピコ秒時間分解ラマン分光システムの拡張と改良 波長1064nmの近赤外光パルスをプローブ(ラマン励起)光源とするピコ秒時間分解ラマン分光システムを改良した.新規にInGaAsアレイ検出器(1024チャンネル)とシングル分光器を導入し,これまでより短い測定時間(積算時間)で高いS/N比のスペクトルを得ることができるようになった. 2.蛍光性分子及び分子複合体のピコ秒時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定と解析 極性溶媒中で分子内電荷移動状態を生成する分子(ビアントリルなど)では,電荷移動に伴う過渡吸収が近赤外領域に現れる.改良したシステム(1064mm励起)を用いて,その共鳴ラマンスペクトルを損掟している. 3.導電性高分子のピコ秒時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定と解析 ポリ(P-フェニレンビニレン)などの導電性高分子では,光励起状態のピコ秒過渡吸収は近赤外領域に現れる.改良したシステム(1064nm励起)を用いて,その共鳴ラマンスペクトルを測定し,局在励起状態の分子構造や,光電荷分離ダイナミックスを明らかにしている. 4.カルテノイド類のピコ秒時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定と解析 1064nm励起のシステムを用いて,近赤外領域に過渡吸収を示すβ-カロテンのS2(1Bu+)状態のピコ秒時間分解共鳴ラマンスペクトルの測定に成功した.さまざまな電子状態(S_0,S_1,S_2状態)の全対称C=C伸縮振動数を振電相互作用に基づいて解析した.
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