研究領域 | 分子高次系機能解明のための分子科学―先端計測法の開拓による素過程的理解 |
研究課題/領域番号 |
22018011
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
出羽 毅久 名古屋工業大学, 工学研究科, 准教授 (70335082)
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研究分担者 |
水野 稔久 名古屋工業大学, 工学研究科, 助教 (90345950)
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キーワード | 光合成 / 膜タンパク質 / 脂質二分子膜 / 直接観察 / 組織化 / 原子間力顕微鏡 |
研究概要 |
光合成膜中での初期過程をになう膜タンパク質複合体(アンテナ複合体(LH2)および反応中心-アンテナ複合体(LH1-RC))が形成する超分子集合系の形態と機能(エネルギー捕集・電荷分離)との相関を明らかにすることができれば、光エネルギーの利用ためのデバイス化に重要な知見を得ることができる。23年度では、(1)基板上に固定化したLH2の分光学的手法(VSFG/ESFG:田原分光グループ(理研))による分子配向の観察、(2)脂質二分子膜中に再構成した光合成膜タンパク質(LH1-RC/LH2)の分子レベルでの集合状態の解析と、集合状態と機能(エネルギー移動)の相関にについて研究を実施した。(1)では、システインを有するミュータントLH2を作成し、その固体基板での分子配向を評価することに成功した。(2)では、異なる組成の脂質を用い、分散・集合状態の異なるLH2/LH1-RC再構成膜を作成し、集合状態をAFMにより分子解像度で観察することに成功した。蛍光分光測定により、LH2間およびLH2/LH1-RC間のエネルギー移動を評価した結果、膜中で密にパッキングしたLH2間において顕著なエネルギー移動が認められ、LH2/LH1-RCの不均一分散系においても均一分散系と同等のエネルギー移動が観察された。さらに電流計測AFMによる顕微鏡-電気化学同時計測をLH1-RC集合体について行った結果、LH1-RC分子はAu-mica上で一定の方向を向いて配列していることが分かった。また、反応中心複合体(RC)の電子移動の方向に沿ったトンネル電流が観測され、整流特性が確認できた。これにより、分子レベルでの集合状態の構造-機能相関を調べる有用な手法の手がかりを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画の実験をすべて遂行することができ、それぞれに対して明確な結果および次の展開につながる知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
基板上に固定化したLH2の分光学的手法による分子配向観察において、部分的に予期せぬ配向を示すデータが得られていることから、LH2の化学修飾による基板への固定化を行い、分子配向の完全制御を達成する。 顕微鏡-電流同時計測によるLH1-RCの電流計測において、光照射下における微弱な光電流を検出するため、光照射系および検出系の工夫により、分子レベルでの電流計測を進める。
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