研究領域 | 分子高次系機能解明のための分子科学―先端計測法の開拓による素過程的理解 |
研究課題/領域番号 |
22018013
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥山 弘 京都大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (60312253)
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キーワード | 水素 / STM / 単分子 |
研究概要 |
水素結合のダイナミクスは孤立命子から凝縮系、生体系に至るまでその物性、反応において中心的な役割を果たしている。特に凝縮系における表面・界面は不均一触媒に代表されるように多くの化学反応が進行する場であり、固体表面における水分子、水酸基、プロトンの反応、ダイナミクスは触媒を理解する上で本質的である。また、表面は真空側から顕微鏡を用いて「観る」ことができる特殊な場であり、水素結合ダイナミクスを実空間で可視化することが可能である。本研究ではCu(110)単結晶表面に吸着させた水分子、水酸基を走査トンネル顕微鏡(STM)により単分子レベルで観測し、個々の水素結合の形成・解離の制御、水素結合を介したプロトン移動、水酸基多量体の協調的なフリップ運動など、水素結合が関与する素過程の観測を行った。触蝶反応は一般に溶蝶効果など複雑な環境下で進行することが知られてしるが、環境を分子レベルで剃御した理想系における研究は、その環壌への依存性を解明するための第一歩となる。Cu(110)表面に水分子を吸着させた後、衡々の分子から水酸基を作製し並べ、さらに水分子を1つ結合させることにより、H_2O-(OH)_n(n=2-4)複合体を作製した。作製はSTMによる単分子操作を用いて行った。複合体は一列に並んでおり、端の水分子に電圧を掛けることで水分子のプロトンが水酸基に移動し、順次水素結合を伝わって端まで到達することを見出した。このようなプロトンリレーは水溶液反応などにおける素過程であることはよく知られているが、その過程を初めて直接観測することに成功した。反応収量の電圧依存性を詳しく調べ、さらに理論計算と併せて解析することにより、水分子の振動励起がプロトンリレー反礁の引き金になっていることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連動した水素ダイナミクスの可視化について、リレー反応と交換反応に成功し、反応と振動励起のカップリングについて明らかにした。成果を論文としてまとめつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに複雑な酸性分子と水分子の相互作用、特にプロトンの非局在化を可視化する研究へと展開する。
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