生きた大腸菌内でのATP合成酵素の回転速度の1分子計測に取り組んでいる。尚、本研究はドイツ(シュツットガルト大学)のMichael Borsch博士との共同研究である。 まず、リポソームに再構成したATP合成酵素の1分子FRET計測を行った。aサブユニットにSNAPタグ、εサブユニットにCLIPタグを導入したATP合成酵素変異体を日本側で作製し活性を確認した。また精製ATP合成酵素への蛍光色素の特異的結合を確認した。次に日本側の柳沼秀幸がこの試料を携えてドイツに滞在し、ドイツ側研究者と共にリポソームに再構成した蛍光標識ATP合成酵素の1分子FRET計測を行った。その結果、FRET変化を示す分子の割合が低いという課題が明らかとなった。これらの課題を解決するため、タグの位置を変えたATP合成酵素を日本側で作製し改善を試みた。 また、ATP合成酵素の1細胞FRET計測、1分子イメージングを行った。Michael Borsch氏が日本に滞在し、日本側研究者と共に細胞内1分子FRET計測の予備実験を行った。ATP合成酵素変異体を発現する大腸菌に蛍光色素誘導体を反応させ細胞膜の特異的な染色を確認した。さらに、日本側で大腸菌内のATP合成酵素の1分子イメージングを行った。蛍光色素を標識後に菌体を培養して、細胞分裂により1細胞あたりの蛍光標識ATP合成酵素のコピー数が減少させることで成功した。
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