研究領域 | 分子高次系機能解明のための分子科学―先端計測法の開拓による素過程的理解 |
研究課題/領域番号 |
22018027
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中迫 雅由 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30227764)
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キーワード | 水和構造予測 / 疎水水和 / 水素結合 / 経験的水和分布関数 / 水和水 / 正四面体型水素結合 / 3次元RISM理論 / 炭化水素鎖 |
研究概要 |
平成23年度は、水和構造予測を全タンパク質表面に拡張するため、疎水水和の系統的なデータベース解析を実施し、その結果を水和構造予測も含めることによって、経験的な方法による簡便なタンパク質の水和構造予測法を確立ため、疎水性原子団をアミノ酸の種類ではなく、炭化水素鎖と芳香環の2種類に分類し、まずその水和形態の特徴を記述することに努め、これまでの親水性水和における水和水の正四面体型水素結合形態を利用した水和確率分布と最も確からしい水和サイト予測を行った。 A)疎水性原子団の水和形態の分類と経験的水和分布関数 芳香環(フェニルアラニン、タイロシン、トリプトファン、ヒスチジン)の周辺と面上部について、そのπ電子面に垂直な方向への水和に関する経験的な水和水分布関数を作成し、その特徴づけを行ってきた。これまでの研究経過を纏め、水和構造予測法への取り込み方法を検討した。 B)水和形態に応じた疎水性水和分布の予測 炭化水素鎖の周辺の水和形態は、おそらくそれらを取り囲む極性原子団とその水和水の空間分布によると予想される。これまでの親水性水和における水和水の正四面体型水素結合形態を利用した水和確率分布と最も確からしい水和サイト予測法を開発した。この方法を、特徴的な疎水表面を持つ酵素蛋白質シタロン脱水酵素の高分解能X線結晶構造解析結果と比較し、より予測確立の高い方法の検討を行った。作成した水和構造予測プログラムによる疎水性水和予測の妥当性を、3次元RISM理論の予測結果と比較することを始めたが、同法の水和構造予測が、親水性領域において既に破たんしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、難しいとされてきたタンパク質の疎水水和について新たな視点からアルゴリズムを作成し、シタロン脱水酵素に限られるが、結晶構造解析で見出される疎水性表面の水和水70%について予測の範囲に入ることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より多くのタンパク質との予測水和構造の照合を実施して、有効性の確認を行う必要がある。
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