本研究は、オージェ再結合ないしオージェイオン化をプローブとして量子ドット(QDs)界面や固/気界面等の特性を解析しようとするものである。一方、界面層では水素結合が重要な寄与をしているので、近赤外領域における倍音ダイナミクスを時間分解して解析し、水素結合の変化を解析することを試みた。 半導体QDsの単一微粒子分光:QDsの欠陥発光は界面の影響を強く受けると考えられるが、発光量子収率が低く単一微粒子分光による研究がなかった。そこで、欠陥発光を主発光とする2種類のQDs、L-グルタチオンキャップCdS QDsおよびCdSe QDsの単一微粒子分光から欠陥準位由来の発光のメカニズムを解明した。その結果、1.欠陥発光を主発光とする単一QDsの発光ブリンキングは強度分布が広いという特徴を持っていること、2.単一QDsの発光スペクトルはバンド幅が狭く、複数の欠陥発光準位が存在し、その間を時間的に拡散している事などが分かった。 半導体QDsのオージェ効果の界面依存性:オージェ再結合の界面依存性を解析するためにCdS QDsを種々の保護剤で保護し、固有発光とトラップ発光が同時に観測されるQDsを合成すると共に、時間分解分光でオージェ再結合を評価した。その結果、界面保護剤に関係無くτ_<Auger>~D^<6.0>の関係を示した。以前の結果を考慮すると、オージェ再結合は1分子層程度の界面(欠陥)状態には依存せず、界面層に勾配を持つような電子状態変化が重要であることがわかった。 倍音ダイナミクスのフェムト秒近赤外分光:H_2OおよびD_2Oをフェムト秒パスルで励起し比較すると、OH水素結合が光電場で強くなりその後緩和する様子が近赤外領域の時間分解スペクトルから明らかになった。
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