動物や菌類の細胞質分裂に必要な収縮環を構成するアクチン繊維とミオシンの相互作用と動的平衡状態の制御については不明な点が多い。私達は、その鍵を握るだろうIQGAP様蛋白質Rng2の分裂期特異的な機能発現機序について、分裂酵母を用いて研究した。今年度は、まずRng2のリン酸化による翻訳後修飾が細胞内での時空間的な制御に関わっているか調べる目的で、サイクリン依存性タンパク質キナーゼCdk1およびpoloキナーゼの基質となりうるセリンおよびスレオニン残基を全てアラニン(非リン酸化型Rng2)あるいはアスパラギン酸(リン酸型Rng2)に置換した遺伝子の機能を調べた。これらの変異タンパク質は、細胞内において野生型Rng2と同様に収縮環に局在した。さらに、それぞれの変異遺伝子を野生型遺伝子と置換して細胞内機能の相補性を調べたところ、両方とも細胞増殖能を相補できることが判明した。今後は、これらの変異株におけるアクチン繊維とミオシンのダイナミクスについて計測する。次に、リン酸化制御とは別に、Rng2のIQモチーフにカルモジュリンやミオシン軽鎖が結合することで細胞内機能が制御される可能性を探った。7つあるIQモチーフを部分的に削除(あるいは機能欠損させる点突然変異を導入)した結果、IQモチーフのひとつがRng2の細胞機能に重要であることを発見した。この領域に結合する因子とその時期を特定することで、分裂期特異的なRng2の機能発現のしくみが解明されるかもしれない。また、in vitroにおけるII型ミオシンモーター活性に及ぼすRng2の影響について解析した。予備的ではあるが、Rng2のアクチン結合ドメインをアクチン繊維に結合させると、II型ミオシンのMg-ATPase活性を抑制する可能性が見いだされた。次年度に向けて、より詳細な解析が求められる。
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