細胞周期の正常な進行のためには、M期に染色体が安定に娘細胞へ分配される必要がある。M期では、両極から伸びたスピンドルが染色体の特殊領域を捉え、染色体は分裂期プレートへ整列後、染色体分配が遂行される。M期においてスピンドルに捉えられる染色体の特殊領域はセントロメアとよばれ、そこへ集積するタンパク質の複雑な機能制御が、細胞周期のM期進行制御と大きく関わっている。しかしながら、100種類程度存在すると言われているセントロメアタンパク質の詳細な機能分担に関しては、不明な点が数多く残っている。本研究では、研究代表者の深川らが同定した複数のセントロメアタンパク質のリン酸化修飾の詳細を明らかにして、そのリン酸化の機能的意義についてDT40細胞を活用した遺伝学的手法を用いて解明することを目的とする。また、セントロメアタンパク質に関する各種変異細胞を対象として電子顕微鏡を用いた観察を行い、分裂期進行におけるセントロメアの高精度構造の変化とスピンドルチェックポイント制御との関連を解明する。本年度は、電子顕微鏡観察によって、インナーキネトコア領域に存在するタンパク質がM期特異的に構造変換することを見いだした。また、この構造変換は、スピンドルチェックポイントが活性化されているときには起きないことを明らかにした。さらに、Auroraカイネースの基質であるNdc80のリン酸化とスピンドル結合の関連についての解析も行った。
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