多くの疾患分子機構として小胞体ストレスの関与が示唆されており、小胞体ストレス応答の解明は、様々な疾患克服を目指す上で重要である。本研究では、小胞体ストレス時におけるタンパク質分解の観点から新規小胞体品質管理機構を明らかにすることを目的とする。我々は、小胞体ストレスが関与する筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関する研究から、疾患原因タンパク質の結合分子として小胞体膜タンパク質Derlin-1を同定し、その機能異常により小胞体ストレス誘導性神経細胞死が惹起されることを発見した。Derlin-1を含むDerlinファミリーは、小胞体からのタンパク質分解(ERAD)に関わるが、その機能は全く不明である。Derlinファミリーに関する機能解析の過程で、ERADに加えて新規小胞体ストレス応答に関する新たな知見を得た。小胞体ストレス下では、小胞体内腔のタンパク質蓄積を軽減させるため、シグナル配列をもつタンパク質は、小胞体へ輸送される前にプロテアソームで分解されることが知られている[pre-emptive quality control:pQC(予防的品質管理)]。この小胞体ストレス誘導性pQCにDerlinファミリーが関与することを見いだした。しかし小胞体品質管理機構におけるpQCの生理的役割はまだまだ不明である。今後は、pQCの生理的役割、Derlinファミリーの生理的機能について解析をすすめる。
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