植物の光合成を担う葉緑体は、複雑な膜系を有しており、葉緑体内の区切られた各々のコンパートメント内のタンパク質内ジスルフィド結合のコントロールは総合的な理解にほど遠い状態にある。そもそも、葉緑体内に存在するチラコイド膜の内腔側は、そこが酸化状態で安定なのか、それとも条件により還元状態になりうるのか、という基本的問題も明らかになっていない。私は、チラコイド内腔にジスルフィド結合の酸化還元調節タンパク質が存在することを明らかにした。また、必要となる還元力はチラコイド膜を隔てたストロマ側から受け取っていることを初めて示した(Motohashi et al.JBC (2006))。 今年度、本研究では、チラコイド膜タンパク質であるCcdAがこの還元力伝達経路に関与する可能性を検討した。CcdAは、高等植物葉緑体チラコイド膜に存在することが予想され、チラコイド膜を介した還元力伝達システムに関与することが予想されている。CcdAに対する特異的抗体を作成後、この抗体を用いてチラコイド膜上における酸化還元状態を調べた。チラコイドの外側からこの還元力伝達システムを駆動した場合、CcdAが還元される条件とチラコイド内腔側の還元力伝達チオレドキシン様因子HCF164が還元される条件が同じであることを見いだした。すなわち、内腔側のTrx様タンパク質HCF164を還元するのは、チラコイド膜を隔てた外側(ストロマ側)のm型Trxがその機能を担っている。チラコイド膜上のCcdAを還元するのもm型Trxであることがわかった。
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