申請者らのグループは、家族性パーキンソン病原因遺伝子LRRK2がCaMKIIとともに封入体(aggresome)形成に機能していることを明らかにした。LRRK2はROCOファミリーキナーゼに属し、Ras様GTPaseドメインとMAPKKK様キナーゼドメインを併せ持つユニークな分子である。近年パーキンソン病原因遺伝子(Park8)として同定され注目を集めているが、その生理的役割に関しては不明な点が多い。我々は、LRRK2と相互作用する分子として、カルシウム依存性キナーゼCaMKII及び細胞骨格構成タンパク質Vimentinを同定した。LRRK2とこれら分子との関係を検討した結果、LRRK2はCaMKIIと結合し、CaMKIIの構造変化を引き起こすことでその活性化状態を維持していることを見いだした。また、LRRK2によって活性化したCaMKIIはVimentinのリン酸化を引き起こし、リン酸化されたVimentinは細胞骨格ネットワークから遊離して、核付近にVimentin cageを形成することを明らかにした。Vimentin cageは、プロテアソームによって分解されなかった異常タンパク質を集積させる構造物aggresomeの形成/維持に重要と考えられている。また、aggresomeはパーキンソン病患者の脳で頻繁に見られる構造物であることから、LRRK2によるCaMKIIを介したVimentincage形成はパーキンソン病発症過程に重要な働きをしている可能性が考えられた。実際、パーキンソン病患者でみられるLRRK2変異体(LRRK2 G2019S)を発現させると、Vimentincage及びaggresome形成が促進することが明らかとなった。以上のことから、LRRK2はCaMKIIとともにVimentin cage形成を介してaggresome形成を制御していることが明らかとなった。
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