現在、易凝集性タンパク質や病原性微生物などのオートファジーの選択的基質は、p62などのアダプタータンパク質を介してオートファゴソーム局在タンパク質LC3と結合し、選択的に分解されると考えられているが(アダプター仮説)、十分に証明されていない。選択的オートファジーにおけるアダプター仮説を検証する為に、p62のノックアウトが選択的オートファジーに与える影響を検討したところ、野生型の細胞と比較して有意な差は見られなかった。さらにオートファジータンパク質LC3が選択性に重要であるかどうか、Atg3ノックアウト細胞とAtg4B変異体過剰発現細胞を用いて検討した。これらの細胞ではLC3の機能が完全に阻害されているが、予想に反して、LC3よりも上流で機能する他のオートファジー関連タンパク質は基質上に局在した。これらの結果は、選択的な基質認識にp62-LC3間の相互作用以外の寄与があることを示唆している。これまでの研究から、Atgタンパク質群は6つの機能的なユニットを構成すると考えられている。どのユニットが基質の認識に重要なのか検討する為に、各種ATG遺伝子欠損細胞にGFPを付与したAtgタンパク質を発現させ、それらの基質上への局在化の階層性を検討した。その結果、LC3ではなくULK1複合体やAtg9L1と呼ばれる因子が最も上流で機能していると考えられる結果を得た。現在、これらの因子が選択的基質を認識する機構を明らかにするため解析を進めている。
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