ミトコンドリアはATP産生時に活性酸素を産生し、そのためミトコンドリア自身のDNAやタンパク質に酸化傷害が蓄積しやすい。余剰に存在する、もしくは傷害を受けたミトコンドリアは活性酸素の源となるため早急に除去する必要があり、ミトコンドリアオートファジー(マイトファジー)がこれらのミトコンドリアを分解していると考えられているが、その分解機構には不明な点が多い。我々は出芽酵母を用いたこれまでの研究で、ミトコンドリア外膜に局在する新規タンパク質Atg32を同定し、オートファジーの積荷選択に関わるレセプタータンパク質Atg11がAtg32と結合することによりミトコンドリアが特異的に積荷として認識されていることを明らかにしてきた。本研究では、Atg32のN末から100~120アミノ酸領域とAtg11のC末領域が結合していること、またAtg32の114番目と119番目のセリンがリン酸化されており、このリン酸化がAtg32とAtg11との結合に必須であることを明らかにした。加えてAtg32のN末100アミノ酸はAtg32の安定した発現に重要であること、Atg32のC末100アミノ酸はマイトファジーには不要であることを明らかにした。こうした結果は、マイトファジーによるミトコンドリア分解にはAtg32をリン酸化する上流のキナーゼが関与していることを示唆しており、細胞がミトコンドリアの量や品質を制御する一連のシグナル伝達経路が存在することを示唆している。
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