研究概要 |
我々は遺伝性難病である家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)の原因タンパク質,トランスサイレチン(TTR)の細胞内レベルでの制御機構を解明し,最終的には新規FAP治療法開発を目指し研究を行っている. (1)Derlinファミリー分子によるTTRの新規品質管理機構の解明 Derlin (Derlin-1,-2,-3)は小胞体関連分解(ERAD)において重要な機能を果たすことが報告されている分子である.我々は,Derlinファミリー分子のタンパク質品質管理における新規機能の同定を目指し,研究を進めている.昨年度までに,TTRの細胞内挙動に対するDerlin過剰発現の影響を検討した結果,Derlin-1,-2,-3はTTRの細胞外分泌を抑制すること,Derlin-1,-3がTTRの翻訳を抑制することを明らかにした.また,Derlinによる細胞外分泌の抑制は小胞体からの輸送阻害であり,本作用はTTRのみでなく膜タンパク質であるBCRPにおいても観察されることを明らかにした. (2)ERAD抑制時に見られる変異TTRへのN型糖鎖修飾機構の分子機構および生理的意義の解明 TTRは本来,非糖鎖付加タンパク質である.我々はERAD阻害時において,D18G TTR (ERAD基質)がN型糖鎖修飾を受けることを見出した.そこで本研究では,変異TTRへのN型糖鎖修飾機構の分子機構および生理的意義の解明を目指し,研究を進めている.これまでに,D18G TTRへのN型糖鎖修飾は翻訳後修飾であること,STT3Bを触媒サブユニットとして有するオリゴ糖転移酵素により行われることを見出している.また,TTRへのN型糖鎖修飾は小胞体局在化のみでは誘導されないことから新たなファクターが必要であることが明らかになった.
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