研究概要 |
細胞内の合成途上鎖を特異的に検出する方法を開発した。細胞の全タンパク質を中性pHのSDS-PAGE(Invitrogen Nu-PAGE)で分離すると、その中に含まれる合成途上鎖はインタクトなpolypeptidy1-tRNAとして泳動される。ゲルのレーンを切り出して弱アルカリ性高温でインキュベートするとペプチドとtRNAとを結ぶエステル結合が切れる。Polypeptidyl-tRNAの安定性を系統的に調べたところ、最後のアミノ酸がVal,Ile,Proの場合は、かなり加水分解に抵抗性であることがわかった。これらの加水分解が充分に起こるように、強アルカリ・高温度処理を行うとゲル中のタンパク質がアクリルアミド成分と反応して2次元目の泳動が不可能となった。最適条件として1M Tris-base-80℃処理を設定した。切り出したゲルレーンを2次元目のゲルの上端に横たえて泳動すると、タンパク質一般は対角線上に並ぶが、Polypeptidyl-tRNAは、tRNAが存在するため1次元目の移動度が単純ポリペプチドに比べて約18kDa相当分遅れる。tRNAが失われた2次元目では移動が昂進する。この方法により、合成途上鎖のpolypeptide部分を対角線の下側のラインとして翻訳を完了した一般のタンパク質から分離して検出することが可能となった。この方法を用いた解析により、大腸菌細胞において、リボソーム救援機構が欠損するとpolypeptidyl-tRNAの数パーセントが安定に存続することが明らかになった。
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