近年、アルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン(PolyQ)病、プリオン病など多くの神経変性疾患において、異常タンパク質のミスフォールディング・凝集が共通に神経変性を引き起こすと考えられるようになり、これらはコンフォメーション病と総称されている。本研究では、異常コンフォメーションの伝播性がプリオンタンパク質のみならず他の異常タンパク質にも普遍的に備わっていることを証明し、コンフォメーション病における異常コンフォメーション伝播性・感染性の分子メカニズムの解明することを目的として、以下の研究を行った。 1)異常伸長PolyQタンパク質の異常βシートコンフォメーション変移の伝播性の証明:可溶性の異常伸長PolyQタンパク質Thio-Q62に対し、Thio-Q62のアミロイド線維状凝集体をシードとして少量添加したところ、可溶性Thio-Q62の凝集体形成を促進するだけでなく、円偏光二色性分散から異常βシートコンフォメーション変移を誘発することを明らかにした。さらに、正常鎖長のThio-Q35に対しても凝集体形成を促進することを見出した。2)異常伸長PolyQタンパク質凝集体の細胞レベルでの感染性の証明:培養細胞にPolyQタンパク質Htt-PolyQを発現させ、培養液中への分泌の有無を検討した。その結果、Htt-PolyQのみならず、分子シャペロンHsp70、Hsp40も培養液中に検出され、細胞外分泌が示唆された。 今後、試験管内実験系で正常PolyQタンパク質に対する異常βシートコンフォメーション変移の伝播性を証明し、さらに培養細胞、マウスを用いた実験系にて異常伸長PolyQタンパク質凝集体の細胞・個体間での感染性を証明し、その分子メカニズムを解明する。
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