獲得免疫系と、それを支えるリンパ球は長い間、有顎類に固有であると考えられてきた。ところが、leucine-rich repeatモジュールを組み換えることにより10^<10>を超える多様性を生み出す抗原レセプターである可変性リンパ球レセプター(variable lymphocyte receptor、以下VLR)が無顎類ヤツメウナギで発見されるに及んで、この考えは根底から覆されるに至った。先に、われわれは、VLRにAとBが存在することを示したが、最近、VLRAとBはそれぞれT、B様のリンパ球に発現され、Aは膜結合型レセプターとして、Bは抗体として機能することが示された。以上から、無顎類の段階で、細胞性免疫、液性免疫を担うリンパ球のサブセットがすでに存在することが明らかになった。今回、我々は第3のVLRを発見し、それをVLRCと命名した。本年度の研究により、1)VLRCはVLA+細胞、VLRB+細胞とは別のリンパ球サブセットに発現されていること、2)VLRCは分泌されないこと、3)VLRCは配列的には、VLRBに対してよりVLRAに類似性が高いこと、4)まれに単一リンパ球においてVLRAとVLRCの両者の組み換えが起きるが、一方のみが機能的なVLRタンパク質をコードできることなどが明らかになった。おそらく、VLRC+細胞はVLRA+細胞と同様、T細胞系の細胞と想定される。したがって、有顎類に3種のリンパ球サブセット(B、αβT、γδT細胞)が存在するように、無顎類にも3種のリンパ球サブセットが存在し、そのうちの二つはT細胞様で、一つはB細胞様であることが示唆された。研究分担者はVLRCの結晶を得て、その構造解析に成功した。
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