研究概要 |
1型膜タンパク質のToll-like receptor (TLR)3,7,8,9は、ウイルス由来の核酸を認識し、炎症性サイトカインやタイプ1インターフェロン産生などの免疫応答を惹起する。TLR7,9はリンパ系樹状細胞とB細胞の、TLR3,8は骨髄系樹状細胞の細胞内オルガネラに局在し、細胞質のアダプター分子を介してシグナルを伝達する。TLR8は系統発生的・構造的にTLR7,9と類似しているが発現分布が異なり、抗ウイルス感染防御や自己免疫疾患への関与など生体内での役割は不明な点が多い。本研究では、TLR8の細胞内局在とシグナル制御機構について解析した。TLR8はHeLa細胞に強制発現させた場合、単球で内在性に発現している場合、いずれも小胞体(ER)と初期エンドソームに局在し、ERとエンドリソソームに局在するTLR7,9と存在場所が異なることが判明した。TLR8の細胞内領域を欠損させると細胞表面に存在し初期エンドソームには局在しなくなることから、細胞内領域が初期エンドソームへの局在を制御していると考えられた。また、TLR3,7,9とER膜で相互作用し、これらTLRを介したシグナルに必須であるERタンパクUNC93B1はTLR8とも結合することが免疫沈降実験で明らかになった。TLR8の膜貫通領域をTLR4のそれと交換するとUnc93B1との結合は見られなくなることから、TLR3,7,9同様、膜貫通領域を介して相互作用すると予測される。TLR8シグナルは、Unc93B1の過剰発現で増強し、siRNAによるノックダウンで減弱することから、Unc93B1との相互作用がTLR8シグナルに必須であることが明らかとなった。今後、TLR8の細胞内traffickingへのUnc93B1の関与について検討する。
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