研究概要 |
組織固着マクロファージは、肝臓のクッパー細胞、肺の肺胞マクロファージ、脾臓内に分布する赤脾髄マクロファージ、マージナルゾーンマクロファージ、脾臓やリンパ節の類洞マクロファージ、更には、中枢神経系に分布するミクログリア細胞等、極めて多彩であり、しかも、生体に最も多く存在する抗原提示細胞として、その存在は長年知られてきたにもかかわらず、その機能は、樹状細胞に比べて遅れている。我々は、血中の抗原に常に曝されている脾臓の赤脾髄に存在するマクロファージ(MΦ)に注目した。脾臓には、通常のF4/80^+Mac-1^<hi>MΦ/Mo(単球)(脾MΦ/Moと称する)に加えて、F4/80^<hi>Mac-1^<low>MΦが存在する。F4/80^<hi>Mac-1^<low>MΦは、共シグナル分子、LFA-1,ICAW-1発現は、脾MΦ/Moとほぼ同様であるが、α9インテグリンの発現があること、一方、炎症巣への遊走に関与するケモカインの受容体であるCCR2の発現が無い事が特徴である。しかも、この細胞群は、脾臓では、赤脾髄に限局して存在するユニークなMΦ亜群である(α9MΦと称する)事が判明した。通常の脾MΦ/Moが、抗原提示細胞として、抗原特異的なT細胞増殖・分化を促進するのに対し、α9MΦは、恒常的に抑制性のサイトカインであるIL-10やTGF-βを産生しており、通常の脾MΦ/MoによるT細胞の増殖・分化を抑制するのみならず、積極的に制御性T細胞(Treg)の産生を誘導することが明らかとなった。α9MΦは、末梢血中に存在し、赤脾髄で処理される自己抗原に対して、自己免疫反応が惹起されないように機能し、免疫系の恒常性を維持する重要な抑制性細胞であることを明らかにした。
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