研究概要 |
【研究内容】T細胞に異所性に発現させた制御性受容体PIR-Bについては,B細胞や骨髄系細胞と異なり,T細胞の適切な免疫応答を阻害するためにその発現が厳密に調節されている可能性が考えられた(Imada M. et al.Int.Immu.2009)。またこれらの知見により,PIR-BがB細胞などにおいて,他の既知の抑制性受容体,たとえばCD22やCD72などと機能的な分担を行っている可能性,さらにB1細胞で特徴的な強いTLR9経路を制御する重要な役割を担う可能性が示唆された(Kubo T. et al.J.Exp.Med.2009)。これらの知見を基盤に,とりわけB1細胞,B2細胞におけるPIR-Bとそのリガンドの細胞膜上での動態の解析,シグナル伝達制御,抗体産生制御の機構の解明に取り組む計画を立てた。平成22年度は特に,新たなPIR-Bのリガンドであることが示唆されたNogo,MAG,OMgpなどとのリガンド認識とMHCクラスIとの相違についてBIACoreを用いた測定を行い,少なくともNogoとMHCクラスIが結合するサイトがPIR-B分子内において相違することを見出した。またMAGとの結合はNogoとの結合親和性よりも低く,MHCクラスIとの結合親和性と同等であることが示された。共焦点レーザー蛍光顕微鏡解析においてPIR-BとNogo,MHCクラスIは細胞膜面上で結合していることを示唆するデータが得られた。【成果の意義】B細胞の制御は,非自己に効果的に反応する一方で自己への有害な反応を回避するために極めて重要である。このシステムが崩壊すると自己抗体が過剰に生産されて自己免疫疾患を惹起する。そのためB細胞は多様な制御機能を持った分子群により調節されている。今回の我々の研究は,PIR-Bが,その同一細胞膜面上の制御性受容体,とりわけPIR-Bによりシスの関係で他分子と協調しながらB細胞の制御を行うことを示した,重要な知見を得たものであり,PIR-B等の制御性受容体の調節により面駅額的な自己の確立が維持されていることが分かった。本研究により免疫疾患を予防,治療することも可能になる将来展開の基盤が構築された。
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