免疫担当細胞は免疫後に相互に影響し獲得免疫を確立する。この機構の中でヘルパーCD4T細胞が果たす役割は大きく、機能的なメモリーB細胞やメモリーCD8T細胞の分化にもCD4T細胞は必須である。本研究ではCD4T細胞の役割の分子機構を解析し、以下の結果を得た。 1)免疫後にリンパ系臓器に形成される胚中心は抗原高親和性の抗体産生細胞やメモリーB細胞を分化させる場である。転写因子Bc16の強発現CD4T細胞はより早く、より多く濾胞ヘルパーT細胞(Tfh)や胚中心ヘルパーT細胞(GC-Tfh)に分化して、抗原高親和性抗体の早期の産生を促し、二次応答における抗体産生も高く誘導することを明らかにした。その分子機構としてTfhでのIL-4、IL-21産生を調整していることが関わっている可能性が考えられ、現在Tfhにおけるサイトカイン産生の生理的意味合いを解析中である。 2)ヘルパーT細胞や、CD8T細胞から分泌されるIL-2は、メモリーCD8T細胞の機能維持に重要であるが、高濃度のIL-2はエフェクター細胞の分化を誘導する。IL-2はCD8T細胞におけるBc16の発現を低下させ、分化調節の分子機構の一つと考えられた。 メモリー細胞分化におけるリンパ球相互の役割を明らかにすることは、免疫応答の人為的調整法を確立することに繋がり、感染症の予防、治療法の開発、腫瘍免疫療法、ワクチン療法の開発、自己免疫疾患の根治療法の開発の基盤となる。
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