胸腺発生型の制御性T細胞は自己免疫応答や過剰な免疫応答を抑制する。制御性T細胞の分化は、T細胞抗原レセプター(TCR)とMHCクラスIIペプチド複合体の親和性が高い場合に亢進するとの仮説が有力であるが、TCRからのシグナルがどのような機構で制御性T細胞の分化を決定するのか、その分子基盤は曖昧である。他のグループによる遺伝子欠損マウスの解析から、NF-κBを活性化するシグナルとAkt活性化の抑制が制御性T細胞の分化決定に重要であることが判明している。しかしながら、これらのシグナルが未分化胸腺細胞でどのような現象を引き起こしているのか、ほとんど明らかでない。申請者はTRAF6シグナルが胸腺内でNF-κBの活性化やAktの抑制を制御し、制御性T細胞の分化を決定しているとの新規知見を得た。そこで、本年度はこの知見を基軸に、胸腺細胞のTCR下流に位置するTRAF6シグナルにより活性化する因子の同定を目指した。 TRAF6欠損マウスおよび野生型マウスより胸腺細胞を調製し、抗CD3抗体と抗CD28抗体でTCRを刺激したところ、TCR依存的なNF-kB活性化およびJNK経路活性化が抑制されていた。またAKT活性化経路はTRAF6欠損により、むしろ増強されていた。一方で、ERK経路活性化やCa流入には異常がなかった。またTCR刺激によるPLCの活性化もTRAF6依存性がなかった。 以上の結果は、TRAF6シグナルはNF-κB活性化とAKTシグナルの抑制をすることで、制御性T細胞の分化決定を行っていることを強く示唆する。現在、TRAF6シグナルの活性化により誘導されるmRNAをマイクアレイなどを用いて解析している。
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