研究領域 | 免疫系自己-形成・識別とその異常 |
研究課題/領域番号 |
22021016
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
東 みゆき 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (90255654)
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研究分担者 |
橋口 昌章 獨協医科大学, 医学部, 助教 (20372443)
神村 洋介 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (40549929)
長谷 英徳 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (70332997)
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キーワード | 免疫 / 補助シグナル分子 / T細胞 / 免疫制御 |
研究概要 |
共刺激分子は、適応免疫系の要となるT細胞およびB細胞応答をコントロールしているが、実際の共刺激分子の役割はさらに多様で、局所免疫や自然免疫にも関与している.本研究では、T細胞に依存しない共刺激分子機能に注目し、特に、皮膚角化上皮細胞(KC)に発現誘導される免疫抑制分子B7-H1の皮膚炎症と発癌機構に焦点をあてた.K14プロモーター制御下にB7-H1を強制発現させたB7-H1トランスジェニックマウス(B7-H1tg)では、発癌物質メチルコラントレン(MCA)の皮内投与およびTPA塗布による早期皮膚炎症が明らかに低下していた.この抑制はB7-H1あるいはPD-1に対する中和抗体投与で解除されたことより、B7-H1:PD-1経路依存的な抑制であることが示された.さらに、MCA投与7週後における発癌を組織学的に検索したところ、B7-H1tgは対照群の約3倍の扁平上皮癌(SCC)および基底細胞癌の発生率を示した.B7-H1tgでは、投与7日目の基底細胞に配列の乱れや染色体濃縮などの異型性変化がすでに認められていたことから上皮間葉移行に関連する分子を検討したところ、B7-H1tg-KCおよび-SCCではE-カドヘリン発現の低下が認められ、B7-H1tg由来SCCでは、E-カドヘリン発現に関わる転写因子Slug,Twist発現の有意の増強が認められた.本結果から、KCにおけるB7-H1の過剰発現はE-カドヘリン発現低下により上皮間葉移行を促し、皮膚発癌に影響を与える可能性が示唆された.ヒト腎癌や咽頭癌などにおいてB7-H1発現の強い癌は臨床予後が悪いとする報告があるが、担癌個体におけるPD-1を介した免疫抑制のみならず、癌細胞におけるB7-H1発現自体が内在的に何らかの細胞機能に関わるシグナルを動かし、癌化や悪性度に影響を与えている可能性が示唆された.
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