研究概要 |
胸腺は、T細胞の正常な分化と選択に必須の中枢リンパ組織であり、胸腺ストローマである胸腺上皮細胞は胸腺細胞と密に相互作用することによりその発生と選択を支持する。申請者はこれまでに、通常の上皮細胞において上皮間バリア機能の中心を担うタイトジャンクション(TJ)局在膜蛋白質であるクローディン(Cld)3,4が、成熟胸腺上皮細胞の一部に発現を認めること、またこのCld陽性細胞が末梢自己抗原に対する免疫寛容に必須の髄質上皮細胞であることを見出している。さらにCld3,4の発現を指標にすることによって、Aire陽性上皮細胞の前駆細胞を発生初期の胸腺原基から同定した(Nat.Immuno1.2007)。加えてこの研究過程で、胸腺細胞の一部にもCld4が発現することが明らかになった。胸腺細胞におけるCld4の発現はβセレクション、ポジティブセレクションを受けるDN3とDP特異的に発現すること、Cld4はin vitroにおいてTCRシグナルの補助刺激活性を示すことから、T細胞の選択過程に寄与する可能性についても報告した(PNAS 2011)。今年度は、胸腺細胞に発現するCld4のT細胞選択における機能を個体レベルで解析を行った。その結果、少なくともWTバックグランドではT細胞の分化発生に顕著な異常は認められなかった。その一方で、NODマウスなど数種のT細胞の選択に異常があるとされる自己免疫疾患モデルマウスの胸腺細胞でCld4が過剰に発現していることを見出した。そこで、現在NODバックグランドのCld4KOマウスを作製し、そのT細胞分化選択の異常の有無、自己免疫疾患発症への影響について解析を行っている。また、Cld4KOマウスはCld4が発現する尿路上皮の異常により加齢個体で伴い水腎症を発症することが明らかになったため、本知見をPLOS ONE誌に報告を行った。T細胞における機能については今後、Cld4コンディショナルKOマウスを作製し、解析する予定である。
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