研究概要 |
我々は抗原受容体遺伝子再構成の分子機構に関して研究を行ない、転写因子E2Aが組換え部位に直接結合し、ヒストンアセチル化を上昇させ組換えを誘導すること,一方のアリルで機能的な組換えが成功するとE2Aの抑制因子であるId3が誘導され、E2Aが組換え部位から解離することによってもう片方のアリルの組換えが抑制されることを明らかにして来た(Agata et al.Immunity 2007)。 一方、最近の研究から、組織特異的な遺伝子の発現にはエピジェネティックな変化に加え、染色体や遺伝子座の核内配置やダイナミクスが重要であることがわかりつつある。そこで本研究では、遺伝子再構成の分子機構に関して、エピジェネティクスに加え染色体ダイナミクスの観点からも検討を加えることを目的として、3次元構造の維持された核内で染色体領域を可視化する3D-FISHによりTCRβ遺伝子座の伸縮状態を解析した。その結果、染色体上に離れて存在するV領域とDJ領域は、組換えが起きる段階で接近し、組換えが抑制されると離れること,さらにE2Aを過剰発現させると組換えが抑制される段階でも両遺伝子領域が接近し、組換えが誘導されることを見出した。 染色体のルーピングに関しては、インシュレーターに結合するCTCFや、染色体分配に関わるコヒーシン等の蛋白が関与することが様々な遺伝子座において示唆されている。そこでTCRβ遺伝子座におけるこれらの蛋白の結合状態を調べたところ、CTCFは有意な結合を示さなかったのに対して、コヒーシンはE2Aの結合様式とよく相関して組換えが起きる時期に特異的に結合することがわかった。さらにコヒーシンが再構成に機能的に関与するか、引き続き検討を行なっている。
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