公募研究
リンパ球はリンパ節や脾臓などの二次リンパ組織を循環し、そこで抗原情報を受容し免疫応答を開始する。リンパ球のリンパ臓器への移入(ホーミング)のメカニズムの理解に比較して、リンパ臓器からの移出については不明な点が多い。私たちは最近、ERMタンパク質ファミリーメンバーのmoesinを欠損するマウスでは、末梢のリンパ球が著明に減少するのに対し脾臓は腫大し濾胞リンパ球が増加すること、養子移入したmoesin欠損リンパ球は時間の経過とともに脾臓に貯留することを見いだした。したがって、moesinがリンパ球の末梢での恒常性の維持やリンパ臓器を介するトラフィッキングに関与することが示唆される。本年度は、moesin欠損マウスの胸腺では、T細胞の産生や分化には変化はないが成熟T細胞が貯留することを見いだした。このことから、moesinがT細胞の胸腺からの移出を制御することが示唆された。また、B細胞は骨髄で産生され、未熟B細胞の段階で骨髄から脾臓に移動し、そこで成熟B細胞となるが、moesin欠損マウスでは、未熟B細胞の骨髄実質から類洞への移動が障害されていることを示した。さらに、moesin欠損リンパ球は、脾臓だけでなくリンパ節からの移出も遅延することを見いだした。胸腺やリンパ節、骨髄からのリンパ球の移出は、sphingosine 1-phosphate(S1P)とその受容体S1PR1により制御されることがこれまでに報告されている。野生型リンパ球をS1Pで刺激すると著明な細胞膜ラッフリングを認めたが、moesin欠損リンパ球では、S1P刺激による細胞や膜の形態変化がほぼ欠如していた。このことから、moesinを介するシグナルがリンパ球のリンパ臓器からの移出に重要な役割をもつことが示唆された。
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