公募研究
免疫反応には二次リンパ組織、特に局所リンパ節の働きが不可欠であり、リンパ節で機能するリンパ球は殆どすべてHEV(高内皮細静脈)とよばれる血管を介して血管系から動員される。従って、HEVを随意に誘導、消滅させることができれば、局所リンパ節における免疫反応の人工的制御が可能になる。本研究では、このHEVの生成、維持機構を分子レベルで明らかにし、局所リンパ節におけるHEVの人工的な誘導法、破壊法を確立するとともに、HEVのリンパ球機能制御における役割を詳細に明らかにし、HEVを標的とした自己に対する免疫反応制御の方法を新たに考案することを目的とする。本年度は、まずHEVの発生を規定する転写因子の同定を試み、胎仔期HEVに選択的に発現する遺伝子Aを同定した。この遺伝子は胎仔期の一定期間のみ発現するが、生後発現が消失し、免疫反応などによりHEVの新生が見られる時期にも誘導されない。この遺伝子を破壊したノックアウトマウスは生後すぐに死亡するために(原因不明)、この転写因子により制御される可能性のある遺伝子の同定が遅れているが、予備的な結果ではHEVに特異的に発現する複数の遺伝子の発現に影響を与えている可能性がある。また、HEV内皮細胞が死細胞を取り込む能力が高いことを見つけ、現在、その分子機序と意義について検討を進めている。オートファジーの可能性については、遺伝子発現解析を行ったところ、関連分子の発現がきわめて低いことから、HEV内皮細胞がオートファジーによって取り込んだ死細胞を処理している可能性は低いと考えられる。死細胞取り込みの機序についてはHEV内皮細胞表面に存在する分子がホスファチジルセリンレセプターとして機能することを明らかにした。この分子のノックアウトマウスでは自己免疫疾患が自然発症することから、今後、この分子の生物学的意義についてさらに明らかにしていく予定である。
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