研究概要 |
Lyn^<-/->GANP^Tgマウスを用いてLyn信号伝達経路によるGANP分子の高発現がLyn欠損のすべてあるいは一部が正常化するかどうかを解析した。Lyn欠損のうち、高IgM血症、T細胞依存性免疫応答における胚中心形成、老齢化後の自己抗体産生、自己免疫性腎炎の発症等については正常化しなかった。しかし、in vitroにおけるB細胞刺激による増殖測定ではLyn欠損によるanti-IgM刺激、anti-CD40刺激における分裂増殖の著しい低下に関してGANPのtransgeneによってその増殖反応をかなりの程度正常化することができた。このことから、Lyn信号伝達の下流にGANP分子が確かに位置し、その発現上昇がB細胞の増殖や生存といったB細胞保持の機能を担うことが示唆された。Lyn^<-/->, GANP^<Tg>マウスにT細胞依存性抗原NP-CGG免疫し、AID発現、SHM導入、IgV_H186.2の高親和性変異(W33→L)を持つB細胞を詳細に解析した。Lyn^<-/->GANP^<Tg>マウスではB220, GL7, Fasマーカーを発現する成熟胚中心B細胞の出現頻度はLyn欠損B細胞と何ら変わりがなかったが、その細胞分画に存在する高親和性のNP-ハプテン特異的B細胞の存在が著しく上昇していた。IgV_H186.2の高親和性変異(W33→L)を持つB細胞の頻度は正常では50%以上に達するが、Lyn欠損B細胞では数%に低下する。このときGANP遺伝子を導入した場合には25~30%に回復することが確認された。すなわちGANP分子の胚中心B細胞における発現上昇が高親和性B細胞の生存を助ける為に重要であることが裏づけられた。本成果は抗原受容体からのLyn信号伝達によるGANP分子の発現上昇が実際に胚中心B細胞の高親和性細胞の生存を直接保護し、獲得免疫において強力な抗体産生を担う為に必須であることを明らかにした。
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