研究概要 |
免疫のひとつである炎症性腸疾患(IBD)が永続的に難治化する要因として、自己類似腸内細菌に反応するIBD免疫病態のプロトタイプを記憶した腸炎惹起性CD4^+メモリーT細胞の永続的潜在性が原因であることを解明してきた。研究期間中(公募;2期4年間)に明らかとした点を概説する。 1.腸炎惹起性CD4^+メモリーT細胞は腸内細菌抗原を認識し、Th1/Th17反応を惹起すると同時に、メモリー化し、生体内に潜在する(Nemoto Y,kanai T et al.J immunol.2009)。 2.腸炎惹起性CD4^+メモリーT細胞の潜在には腸内細菌の存在は必須ではなく、IL-7によって、IL-7が存在する全身臓器により維持されており、IBD治療の根本に抗生剤投与の無効性を指示する証明を行なった(Nemoto Y,kanai T et al.J immunol.2009)。 3.腸炎惹起性CD4^+メモリーT細胞生存には腸管自身が産生するIL-7ではなく、腸管外で産生されるIL-7が必須であることを証明した(Tomita T,kanai T et al.J immunol.2009)。 4.腸炎惹起性CD4^+メモリーT細胞は腸内細菌抗原をT細胞受容体からの刺激以外にT細胞自身が発現するTLR分子を介在し直接、PAMP刺激によって腸炎発症に関与することを証明した(Tomita T,kanai T et al.J immunol.2009)。 5.腸炎惹起性CD4^+メモリーT細胞は恒常的腸内細菌抗原刺激により免疫学的加齢現象が生じ、抑制性T細胞へコンバートする現象を発見した(Totsuka T,kanai T et al.J immunol.2009)。 6.腸炎惹起性CD4^+メモリーT細胞の分化の過程では、Th17→Th1細胞というalternative Th1細胞経路が存在することはin vivoで証明した(Sujino T,kanai T et al.Gastroenterology.2011)。
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