公募研究
生体防御反応において、ヘルパーT細胞は様々な免疫反応を制御する細胞としての重要性が知られていたが、最近の知見から生体の中にはこれらのT細胞サブセットを高次で制御するT細胞群の存在が明らかにされている。これらサブセットには、NKT細胞、Natural occurring Treg (nTreg)細胞に加え、我々が新たに同定した「記憶型T細胞」の表現型を持つIL-4産生T細胞とIL-17産生T細胞等がある。本研究は、記憶型T細胞の自己免疫性反応における役割を明らかにすることにある。これら抗原による鼻腔暴露は、抗原感作がないマウスにおいても24時間以内に、IL-17依存的に誘導される気道炎症反応を惹起する。この抗原特異的気道炎症反応は、OVA特異的TCRトランスジェニックマウスを、OVAで感作した場合でも観察されることから、我々は抗原特異的に刺激に対してIL-17を産生できるNatural IL-17産生T細胞の関与を検討した。その結果メモリー型を表現型に持つCD4T細胞集団の中に、分化という過程を経ることなくIL-17を産生しうるTh17と非常に良く似たT細胞集団の存在を確認し、このT細胞をNatural Th17細胞と定義づけた。Natural Th17は通常Th17細胞が分化に必要とするIL-6やIL-23が存在しないI16欠損・p19欠損マウスにおいても存在していた。この細胞は、OVAの鼻腔暴露似ともない、鼻腔へと浸潤し、IL-17を産生することにより、好中球を鼻腔に集積させ、炎症反応を惹起していた。この結果から、生体にはinnateの状態でIL-17を産生するT細胞が存在し、気道における炎症初期反応を制御する役割があることが示された。この研究成果より、自然免疫の過程で炎症性サイトカインであるIL-17を産生することができるT細胞サブセットNatural Th17の存在が明らかにされた。このサブセットは急性の気道炎症を形成する働きを持つことから、獲得免疫が成立する以前にすでに、自己免疫反応を制御できるT細胞が存在することが示唆された。
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