ダイヤモンド中の窒素-空孔複合体(NV)中心が持つスピンの特徴は、固体中のスピンにも関わらず優れたスピンコヒーレンス特性を持ち、光により検出・操作することが可能な点である。水落らは特に^<13>Cの核スピンに注目し、複数量子ビット系の実現と優れた量子ビット操作性を示してきた。本研究ではこれまでの研究を発展させ、NV中心による量子レジスタ内の多量子ビット化を目指し、更に量子レジスタの量子ビット間の結合にも発展する仕組み作りを目指した。 量子レジスタ内での多量子ビット化ではNV中心の電子スピンと結合した核スピンによる4量子ビット以上のNV中心を探索し、量子もつれ生成の実証を目指した。成果としては4量子ビットでの量子もつれ生成に成功した。成果は学会発表を行った。集積化等の優位性から固体系における量子情報素子の研究が活発になされているが、固体系で量子もつれ生成が報告されているのは3量子ビットまでであり、4量子ビットでしかも室温で実現した点は非常に意義深いと言える。 他材料との量子ビット間の結合の仕組みつくりに関してはNV中心のスピンと超伝導量子ビットとの結合に成功した。本成果はNTT超伝導量子ビットグループ、NIIとの共同研究成果で、超伝導素子による測定はNTTが行った。阪大グループは試料作製とスピン特性の評価、及び超伝導量子ビットとのスピンの結合に関する議論を行った。成果はNature誌に掲載された。超伝導量子ビットは集積化に優位性を有するが、メモリー時間の短さに大きな課題があった。超伝導量子ビットと長いメモリー時間を有するNV中心のスピンを結合させた複合系の原理実験の成功は、その課題を克服し、集積化へ道を拓く点で非常に意義深いと言える。
|