研究概要 |
量子推定理論とは,測定を介して観測者が物理系から取り出せる情報の限界を非可換統計学の観点から厳密に研究する分野である.本研究の目的は,量子推定理論におけるこれまでの理論的研究成果を,主として研究計画DO1「光子量子回路による量子サイバネティクスの実現」の研究代表者である竹内繁樹氏の研究グループとの共同研究を通じて実験的に検証すると同時に,その過程で得られる様々なノウハウ・研究成果を量子情報操作/制御の基盤技術として量子情報システムに組み込むことで,測定を介した量子系のフィードバック制御方法を確立し,量子情報科学の発展に寄与することにある. 本年度は,研究代表者が先行研究で明らかにしたCramer-Rao型下限の操作的意味づけの実験的検証に向けて,適応的推定方式の数値実験的検討を行った.まず,光子の偏向方向の推定問題に対して適応的推定法を用いた場合,最尤推定量が一致性および漸近有効性を示すという理論結果を数値的に確認した.引き続き,観測データから偏向角およびその分散を推定した場合の挙動を区間推定法を用いて解析し,サンプル数と繰り返し数の積が一定(15万回)という条件の下で最適なサンプル数を見積もった.この結果,実験的に実現可能な条件下で,量子推定理論が導出する推定方式の最適性が検証できそうであることが明らかとなった.現在,竹内グループの量子光学実験も着々と準備が進んでおり,近い将来,検証実験が軌道に乗るものと期待される.
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