本研究は、画像再構成・画質改善・病変検出などの多様な画像処理を1つのアルゴリズムやソフトウェアに統合する医用画像分野における新しい枠組みを提唱し、これにより画質や病変検出能の改善など様々な長所が生まれることを示すことを目的とする。本年度は、これを実現するために設定した小テーマの中で、PET腫瘍検査におけるイメージングと病変検出の統合に関する研究を行った。具体的には、PET腫瘍検査を対象として、イメージング(投影データからの画像再構成)と病変検出を統合して、正常部位と病変部位を別々の画像として分離して再構成する新しい画像生成法を開発した。提案手法では、対象画像を正常な臓器を表す背景画像と病変部位を表す疎な画像の和で表す複合画像モデルに基づき、背景画像と病変画像に各々の性質に応じた正則化を施して2変数逆問題を解き、両者を分離して推定する。代表者らの先行研究を出発点として、コンプレストセンシングによる新しい正則化法・PET-CT装置においてCT画像から取得した領域の境界情報を用いて画質改善を行う手法などを開発して、性能を改善した。そして、シミュレーション実験とPET-CT装置で取得したFDG全身腫瘍検査データを用いた実験を行った。また、提案手法が画像再構成と病変検出を別々に行う従来の枠組みと比較して優れることを示すため、a)病変コントラスト対雑音特性の定量評価、b)コンピュータオブザーバと呼ばれる手法を用いた病変検出能の定量評価、を行った。その結果、画質と病変検出能の両者において、提案手法が従来手法よりも優れることが示された。最後に、研究が予定よりも少し早く進行したため、提案手法を認知症診断を目的とした脳血流SPECT/PETイメージングに拡張することに着手した。
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