本研究は、画像再構成・画質改善・病変検出などの多様な画像処理を1つのアルゴリズムやソフトウェアに統合する医用画像分野における新しい枠組みを提唱し、これにより画質や病変検出能の改善など様々な長所が生まれることを示すことを目的とする。本年度は、これを実現するために設定した小テーマの中で、1)認知症やてんかんの診断を目的とした脳血流SPECTにおけるイメージングと病変検出の統合、2)提案する枠組みが被曝量低減・測定データ削減・高画質化に寄与することを実証するための少数方向投影データからのCT画像再構成法の開発、の2つの研究を実施した。1)の小テーマでは、脳血流SPECTイメージングを対象として、イメージング(投影データからの画像再構成)と病変検出を統合して、正常部位と病変(血流低下)部位を別々の画像として分離して再構成する新しい画像生成法を開発した。提案手法では、対象画像を正常部位を表す背景画像と病変部位を表す疎な画像の和で表す複合画像モデルに基づき、背景画像と病変画像に各々の性質に応じた正則化を施して2変数逆問題を解き、両者を分離して推定する。特に、脳血流SPECT検査ではMRI形態画像の撮影を同時に行うことに着目して、背景画像の正則化にMRI画像を活用する独創的な手法を構築して、画質を大幅に改善することに成功した。2)の小テーマでは、近年注目されている少数方向投影データから高画質のCT画像を生成する問題を対象として、同一患者の以前に撮影したCT画像や他の患者の同一部位を撮影したCT画像から事前情報を構築しておき、事前情報を活用して不足した投影データから正常部位を表す背景画像と腫瘍などを表す病変画像を別々の画像として分離して再構成する新しい画像生成法を開発した。いずれの小テーマにおいても、シミュレーション実験と実データを用いた実験を行い、提案手法の有効性を実証した。
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