研究領域 | 原子が切り拓く極限量子の世界ー素粒子的宇宙像の確立を目指してー |
研究課題/領域番号 |
22104501
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鳥井 寿夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (40306535)
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キーワード | 量子縮退 / レーザー冷却 / 冷却分子 |
研究概要 |
本研究は、電子EDM探索のため、LiSr分子装置を立ち上げることを目的としている。Li原子の実験装置は全く無かったことから、初年度はLi原子のレーザー冷却のために、波長671nmの外部共振器型半導体レーザーとテーパーアンプを作製し500mWの出力を得た。 今年度はこの光源の周波数安定化のために、ヒートパイプを立ち上げて偏光分光法により6Li原子の吸収線の微分信号を得て光源にフィードバックすることで、光源の周波数安定化を行う。Li原子がヒートパイブ窓と反応してしまうのを防ぐため、アルゴンガスを封入したところ、偏光分光信号が5倍以上に大きくなることを発見した。このメカニズムを解明するためレート方程式による計算を行い、磁気サブレベルと超微細構造間のオプティカルポンピングやvelocity changing collisionなどを考慮することで、実験結果を定量的に説明することができた。そして、この偏光分光信号を用いて671nm光源の周波数安定化に成功した。 LiとSr原子の同時MOTを実現するため、真空装置の改造を行った。LiとSr原子は蒸気圧の大きさが近いことから、同じオーブンに封入し400℃で両方の原子の原子ビームを得た。共通のゼーマンコイルを用いてゼーマン減速を行った。そして6方向からLi用の波長671nmとSr用の461nmのレーザー光を減速された原子ビームに照射し、四重極磁場を印加した。これにより世界で初めて、LiとSr原子の同時MOTに成功した。 以上により、Li原子のレーザー冷却実験装置を立ち上げ、LiとSrの同時MOTに成功した。今後は、これらの冷却原子を光トラップに以降することで、蒸発冷却を行い量子縮退と分子生成を目指すことができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子縮退や分子生成にはまだ至らないが、LiとSrの同時MOTに成功したことはとても重要であり、次の段階の実験に進むことができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、LiとSr原子を光トラップへ移行する。光トラップ中で蒸発冷却・協同冷却を行うことで、量子縮退達成を目指す。光トラップ中でLi原子に、磁場によるフェッシュバッハ共鳴を用いて弾性衝突レートを高め、効率的に蒸発冷却を行う。このときLiとSr原子の弾性衝突を利用して協同冷却を行う。
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