本年度は去年組み立てた実験装置の不備を明らかにして改善し、また、実験装置の特性を調べ、組み立てなおした。 昨年度、実験装置は組みあがったが、ガラスセルをはさんだ光共振器が予想を下回る性能しか示さなかったため、必要な光強度が得られず、光格子でルビジウム原子を真空中に保持することができなかった。 本年度、実験装置を調査し、ガラスセルの素材に問題があり、透明度が低いことを確かめた。そこで、素材の試験などを行いながらガラスセルを作り直した。 一方、実験は均一な低磁場下で行う必要があるので、磁気シールドを用意したが、その性能や消磁や磁場補正の技術を分かっていなかった。そこで、ガラスセルを作り直し、装置を組み立てなおす間にその性能を調べ消磁や磁場補正のやり方などを試行した。その結果、磁気シールドの穴の大きさなどが対称でない場合には消磁後にもシールド内部に不均一な磁場が残留するという結果が得られた。今後、測定精度を向上させる場合にはこの点に留意する必要があるが、その磁場勾配は20pT/mmであり、現在の実験には影響ないと考えられる。一方、0.1nT以下までの消磁には1Hz以下の交流電流で消磁すればよいことが分かった。また、シールド外部からの磁場補正は消磁前に印加しても効果はなく、消磁後に印加する必要があることが分かった。
|