本研究ではこれまで全く別の実験系として扱われてきたイオントラップと中性原子のトラップを同一空間中に実現し、その両者の相互作用を利用して極低温の分子イオンの生成を目指す。 本研究では原子間相互作用がフェッシュバッハ共鳴を利用して可変な中性原子^6Liを、またこの原子種との混合系を作成した際のトラップの安定性・熱平衡への到達し易さなどを考慮してLi原子よりも数倍質量の思い^<40>Ca^+をイオン種として選定した。実験ではトラップされたイオンからの蛍光をPMT検出器で観測するとともにCCDカメラで空間的な分布も測定した。精密な調整の結果、トラップしたイオンが10分程度監視していてもロスしない程度の長寿命を実現することができた。また、イオンの数を減らしてRF電場による加熱の影響を小さくしていくことで、イオンの結晶化の観測にも成功した。結晶化が見えたことからレーザーによってイオンが効率よく冷却されていることが分かる。 イオントラップについての実験準備が整いつつある中で、イオントラップと中性原子トラップの混合系を生成するためのチャンバーの作成を開始した。イオンと中性原子を混ぜる方法はいろいろな手法が考えられるが、量子縮退した中性原子と振動基底状態に落ちたイオンの混合系が最終目標であり、その目的に最も相性の良いと考えられる光ピンセットを用いた方法を採用した。この方法イオントラップと中性原子のトラップを別々の位置に作成し、光ピンセットの手法を用いて中性原子気体をイオントラップの位置に運ぶ方法である。今回我々はイオンと原子を同一空間に作成するチャンバーを作成し、イオントラップチャンバー側ではイオンが、中性原子チャンバー側では中性原子がそれぞれトラップされている状況をすでに実現することに成功した。
|